2.5次元研究録

2.5次元研究についての足跡を残すブログ

2.5次元ミュージカルってそもそも何?②~宝塚って2.5次元に分類されないの?~

 だいぶ時間を空けてしまいました。こんにちは、かもめです。

 卒論書き終えてから4か月、やっと余裕が出てきたのでいい加減更新しようと思います。

 

早速ですが、前回の続きと行きたいと思います。

前回 は①2.5次元ミュージカルの定義の整理と、②なぜ2.5次元”ミュージカル”なのか

という2点について触れました。

 

今回は、

2.5次元ミュージカルってそもそも何?

宝塚は2.5次元ミュージカルに入らないのか

ということについて、まずはざっくり考えていきたいと思います。

 

私自身は宝塚歌劇団の作品を見たことがないのですが、2.5次元ミュージカルの定義を”2次元の漫画・アニメ・ゲームを原作とする3次元の舞台コンテンツの総称”と考えるならば、「ベルサイユのばら」や「戦国BASARA」、「逆転裁判」や「ルパン三世」は立派な2.5次元ミュージカルです。

しかし、宝塚歌劇団の作品は2.5次元ミュージカル協会のHPにラインアップされてきませんでした。*1それはなぜなんでしょうか?

 

この疑問に対して、鈴木国男は以下のようなことを述べています。

 

「2・5次元ミュージカル」の定義 にかなう作品を、長らく、そして数多く上演してきたという事実は、既に述べた通りである。しかし、それらは「劇団四季の舞台」であり、「宝塚の作品」であって、やはり新し いジャンル分けを要求する必要はなかった。(中略)ともに元となるイメージを再現する技術には抜きん出たものを持ち、それぞれに厚いファン層を擁し、リピーターのおかげで同じ作品の上演回数を増やし、それによってさらに存在感を高めることに成功している。

繰り返し上演するということは、そして繰り返し見るということは、それ自体、舞台上に作られたイ メージを強固にする。そのことが、2次元を3次元に変換する行為に対する信頼につながる。

今日それぞれが上演する「2・5次元ミュージカル」は、「四季」ないしは「宝塚」の下位区分であり、それ以上の定義を必要としないのである。

 *2

 

つまり、「宝塚歌劇団作品」というブランドが成立しているため、宝塚歌劇団が「2.5次元ミュージカル」の定義にかなう作品を上演したとしても、新たにジャンル分けをする必要がなく、あくまで「宝塚歌劇団作品」の中の1つにしかなり得ないということです。

 

また、「宝塚歌劇団作品」と「2.5次元ミュージカル」は原作の捉えられ方が異なっています。

東園子は、2.5次元ミュージカルと宝塚歌劇団では、見せるものが異なっており、宝塚は、スターを見せる舞台であるのに対して、2.5次元ミュージカルは、キャラクターを見せる舞台であると述べています。

宝塚歌劇団の作品では、タカラジェンヌ自身の個性や表現したいこと、男役/娘役らしさがいかに引き立つか、という観点が優先されますが、2.5次元ミュージカルにおいては、原作の絵が絶対的基準になり、役者はキャラクターを忠実に再現することを求められるのです。

*3

 
宝塚歌劇団は「2.5次元ミュージカル」という単語が生まれる前から、現在の2.5次元ミュージカルの定義にかなう作品を上演してきています。しかし、それはあくまで「宝塚歌劇団作品」の一部であり、後から発生したジャンルに振り分けられるものではないのです。
また、2.5次元ミュージカルとはそもそも見せたいものが異なっているため、2.5次元ミュージカルの定義である、「2次元の漫画・アニメ・ゲームを原作とする3次元の舞台コンテンツ」であったとしても、2.5次元ミュージカルと呼ばれる日は来ないのだと言えます。
 
今回はここまでにしようと思います。

 実は、前回エントリで書いた卒論のテーマから、最終的に提出した卒論のテーマが変わってきているので、次回は卒論の概要と軽いまとめを載せようと思います。

 

先に全文載せるか、細切れにして更新するか悩んでいるので、意見をいただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございました。

 

*1:https://www.j25musical.jp/

*2:鈴木 2017 http://id.nii.ac.jp/1087/00003147/ 4ページ

*3:東園子(2016)「2.5次元ファンの舞台の見方~宝塚ファンとの比較から~」、『美術手帖』、20167月号、84ページ